FXで損失があっても確定申告はすべき!損益通算と繰越控除とは?

FX

2022年も間もなく終わりを迎えます。

年が明けると個人事業主の方や兼業サラリーマンの方は、確定申告の準備で忙しくなりますね。

確定申告は一定の利益が出ている場合は、行わなければならない義務ですが、

自分は損失が出ているので、確定申告をする必要はない

と思っていたりしませんか?

損失が出ている方であっても確定申告をすれば、来年以降の税金を抑えられる可能性がありますので、ぜひ確定申告をすることをオススメします。

今回はお問い合わせが多い「FXで損失が出た場合の確定申告」についてまとめてみました。

確定申告について、いつかしようと放置していると、あっという間に申告の期限到来となってしまいます。

面倒なことはできるだけ早めに片づけてしまいましょう!

スポンサーリンク

1.確定申告が必要な人・不要な人

まず、確定申告はFXで利益が出た人全員がしなければいけないわけではありません。

確定申告が必要な方不要な方がいます。

確定申告はどのような人が必要でどのような人が不要なのかをおさえておきましょう。

■確定申告が必要な人

  • 給与所得、退職所得以外の所得の年間合計額が20万円を超える人
  • 年間の給与収入が2,000万円を超える人
  • 2か所以上から給与もらっている人
  • 医療費控除や住宅ローン控除の適用を受ける人

■FXの確定申告が不要な人

  • 上記「確定申告が必要な人」の条件いずれにも該当しない人
  • 公的年金などの年間合計収入額が400万円以下の年金生活者で、かつ、公的年金以外の所得の年間合計額が20万円以下の人
  • 専業主婦など給与等の収入が無い扶養家族で、FX等の年間合計所得額が38万円以下の人
例えばFXの利益が100万円ある会社員や、給与を2か所からもらっている人などは確定申告が必要です。

2.FX取引による所得とは

FX取引による所得は以下の式で計算されます。

FXによる所得 = 為替差益 + スワップポイント – 必要経費

FX取引で得た利益は雑所得となり、必要経費が認められる場合があります。

2-1.FXで必要経費として認められるものは?

一般的にはFXの勉強のために購入した書籍代などが経費となる可能性があります。

FXのために購入したパソコン、インターネット回線使用料、FX売買のためのツール、セミナー参加費など、実際にFX取引のために使用したものは必要経費として認められる場合がありますが、所轄税務署によって判断が異なります。

心配な場合は管轄の税務署へ相談するようにしましょう。

ちなみに筆者は仕事がら税務署のコールセンターに頻繁に電話問い合わせしますが、担当者により回答に差があるように感じます。
誤りで訂正の連絡が来ることもありますが、人為的ミスにより間違った確定申告に繋がる危険もあります。
窓口でもコールセンターでも問い合わせをした際は、問い合わせ先、担当者名、問い合わせ時期を念のために記録しておくことをおすすめします。

2-2.FXの確定申告に必要な書類

FXの確定申告では、次のような書類を用意する必要があります。

必要書類1:申告書第一表、二表、三表

  • ①申告書第一表は、収入や所得、社会保険料控除等の金額を記入する書類
    ※源泉徴収票から転記
  • ②第二表は、所得の内訳や社会保険料控除等の詳細などを記入する書類
  • ③第三表は、申告分離課税の所得がある人用の申告書
    ※申告書第一表、二表、三表は、国税庁のサイトからダウンロードできます。

必要書類2:FXの取引履歴が分かる損益報告書

FXの損益報告書は、利用しているFX会社のサイト等からダウンロードできます。

必要書類3:本人確認書類

マイナンバーカードなど本人確認書類が必要です。

書類は、なるべく早めに用意しておいて、確定申告の時期になれば、迅速に提出できるようにしておきましょう!

2-3.FXの利益にかかる税率は20.315%

FX取引(Foreign Exchange)は、証拠金を差し入れて2つの国の通貨の為替相場を予測して売買を行うデリバティブ取引の一つです。

取引差益・スワップ益が出た場合は、「先物取引にかかる雑所得等の金額」として申告分離課税で20.315%の税率で確定申告により納税する必要があります。

所得税法上10種類に分類される所得の内、FXの為替差益やスワップポイントは「雑所得」の「先物取引に係る雑所得等」に分類されます。

原則、FXの利益には一律で20%(所得税15%+住民税5%)の税金が課されることになっていますが、2037年までは所得税額に対して2.1%の「復興特別所得税」が課されることになっているため、

2037年分までの税率は、

一律20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%)

となっています。

個人の場合、株式やFXの取引など投資で得た利益には「所得税・住民税」がかかります。

FXの利益である「為替差益」と「スワップポイント」による利益がありますが、どちらも課税対象です。

個人の場合は、原則として確定した利益が課税対象になりますが、ポジション(建玉)の含み益未決済ポジションのスワップポイントなどは、課税対象とはなりません。

■1月1日から12月31日までに決済して売買益の受渡が完了したもの
 ⇒
課税対象
■未決済のまま年を越した建玉の評価益・スワップポイント
 ⇒ 課税対象ではない
※法人の場合は、未決済ポジションも申告対象です。

2-4.課税対象期間はいつからいつまで?

個人のFX取引の場合は、2022年1月1日午前7時翌年2023年1月1日午前6時59分59秒までに確定した損益が課税対象となります。

※FX市場のオープンとクローズ時間の影響を受けます。

3.FXで損失があっても確定申告をオススメする理由

FXで一定以上の利益を得ると税金の支払義務が発生します。

年間を通して利益が出た場合、確定申告を行う必要があります。

納税は国民の義務であり、確定申告を怠ると脱税となってしまいます。

一方、FXで損失が出ている場合は確定申告をする義務はありません。

面倒な作業はできるだけ避けたいので、不要ならば確定申告なんて手間がかかりそうなことは避けたいですよね。

しかし、手間がかかっても確定申告をした方がオトクになるケースがあります。

むしろ損失が大きければ大きいほど、確定申告をしておいた方が後に節税ができてオトクになります。

なぜなら、FXによる損失がある場合、確定申告をすることによって「損益通算」や「損失の繰越控除」ができる可能性があるからです。

3-1.損益通算とは

損益通算とは簡単にいえば利益と損失を相殺することをいいます。

FX取引で1年間の取引において損益が生じた場合、確定申告をすることで他の先物取引に関連する雑所得との損益通算が可能です。

FXの損益は、その他の先物取引における年間損益と合算して申告することが認められているのです。

FXによる所得と損益通算できるもの

FXで生じた損益は「先物取引に係る雑所得に分類される所得損益通算可能です。

先物取引に係る雑所得とは以下のようなものがあります。

  • CFD(差金決済取引)
  • バイナリーオプション
  • 商品オプション取引
  • 商品の実物取引のオプション取引
  • 商品指数先物取引(商品先物)
  • 日経平均先物・TOPIX先物等
同じ雑所得でも「先物取引に係る雑所得等」以外の所得とは損益通算できません。
例)暗号資産(仮想通貨)取引で発生した損益や海外FX業者の口座での損益など

FX取引および他の先物取引との損益を計算し、合算した金額がマイナスの場合はもちろん課税されません。

プラスとなり納税する場合も、損失が出ている取引分を差し引くことができるので節税になります。

逆に、FX会社のFX取引で利益が出ている場合でも、他のFX会社や先物・オプション取引で損失が出ていれば、利益の額から差し引くことができます。

例えば、1年間のFX取引で、-100万円の損失が出て、他の先物取引で+50万円の利益が発生したとしましょう。

その場合、損益通算を行うと、先物取引に関連する雑所得合計金額は-50万円の損失が生じたことになります。

上記の場合、他の先物取引の利益50万円の税金は損益通算により、税金がかからなくなります。

さらにこの-50万円は後述する翌年以降3年間繰越】ができるので、翌年以降に先物取引関連での雑所得合計がプラス利益の場合は、そこから控除することができます。

翌年以降の節税にもなりますね!

投資で「損」が出た場合は、納税無し・確定申告不要ですが、翌年以降の節税のためにも確定申告しておきましょう。

3-2.損失額の3年間の繰越控除

FX取引で損失が出た場合、確定申告をすることで、その損失額を3年間繰越控除することができます。

これは損失額の3年間の繰越控除と呼ばれています。

3年間の繰越控除とは、先物取引に関する損益を「雑所得」で損失を計上した場合、その損失額を翌年以後3年間繰り越すことができる仕組みです。

2022年に計上した100万円の損失を翌2023年から3年間繰り越した結果、翌年と翌々年の利益と差し引くことができます!

上記のように、翌年に+50万円、2年目に+40万円、3年目に+30万円の利益が出た場合、2022年から繰り越した-100万円を使って控除を受けることができます。

3年目に控除する際、既に1年目と2年目の合計で90万円の控除を使っているので、残り10万円分までしか控除は受けられません。

差額の20万円が課税対象になります。

※課税所得:税金の課税対象となる所得

もちろんこの繰越控除の適用を受けるためには確定申告をする必要があります。

つまり、損失を確定する時と繰越控除の適用をうける時、いずれも確定申告が必要なのです。

ちなみに、利益や損失が少額で、面倒だから確定申告をしない方もいると思いますが、時間に余裕があればご自身の為に自己管理用に確定申告用の書類を作成しておくことを推奨します。
実際に確定申告までする必要はありませんが、一年間の取引を見直し、今後大きな利益や損失が出た場合に備えて準備しておくと安心です。

まとめ

先物取引であるFX取引は、他の先物取引で得られた雑所得と合算できます。

損失が発生している場合、確定申告することにより損益通算することができます。

合算が損失であれば、課税所得がゼロ、課税無しです。

■損益通算できる先物取引

  • CFD(差金決済取引)
  • バイナリーオプション
  • 商品オプション取引
  • 商品の実物取引のオプション取引
  • 商品指数先物取引(商品先物)
  • 日経平均先物
  • TOPIX先物等
  • 商品の実物取引のオプション取引 など

さらに損失は3年間の繰越して控除することができます。

FX取引で損失が発生した際は、確定申告することを検討してみましょう!

コメント