配偶者居住権(2020民法改正点)ってなに?不動産投資への影響とは

配偶者居住権とは 税金対策

2020年、民法大改正あり、不動産業界でも様々な変化が起こっております。

相続物件にかかわる大きな変化では、「配偶者居住権」が新設されました。

「配偶者居住権」とは、どのような制度で、私たちの生活にどのように影響するでしょうか?

そして、不動産投資に影響はあるのでしょうか。

今回は、相続物件に大きく係る「配偶者居住権」を学びます。

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配偶者居住権とは?

このたびの民法改正では民法総則、債権など非常に多い改正点がありますが、そのほとんどは判例にしか無かったものを条文化したり、既にある条文を修正をしたものです。

「新設」は珍しく、重要度が高く、必要な制度なのです。

 

配偶者居住権とは
配偶者の一方が死亡した際、残された配偶者の居住環境を守る権利

 

被相続人と同居していた配偶者が対象です。

配偶者は、被相続人の財産である建物に相続開始時に居住していた場合、その建物に終身(または一定期間)、無償で居住する事ができます。
※持ち家のみ(賃貸対象外)
※第三者との共有物は対象外(配偶者本人との共有物は可能)

配偶者短期居住権との違い

配偶者居住権と同時に、「配偶者短期居住権」が新設されました。

この二つはどのような差があるのでしょうか。

配偶者短期居住権は、居住できる期間が「短期」の一定期間です。

被相続人の財産である建物に相続開始の時に無償で居住していた場合、一定の短期間、無償で居住することが出来ます。

遺産分割により建物帰属確定日または相続開始から6か月経過日」のいずれか遅い時まで居住できる権利です。

相続人、受贈者に対して、登記なく対抗可能です。

この新たに創設された二つの権利は、大きな違いとして建物に居住できる期間が異なります。

 

■配偶者居住権 ・・・ 終身
■配偶者短期居住権 ・・・ 一定期間

 

配偶者居住権とは、被相続人が亡くなった場合でも、配偶者が引き続きその家に住む事ができる権利です。住む場所の確保や代償金の問題が生じない所が最大のメリットです。

しかし、この権利は、下記のいずれかが必要です。

  • 被相続人の遺言
  • 被相続人からの死因贈与
  • 遺産分割協議(調停)

つまり、遺言等が無い場合は配偶者居住権を使うことができません。

被相続人がこのような手続きをとらずに亡くなってしまうと、配偶者は従来の家に住むことができなくなる可能性があり可哀そうです。

このような場合に、応急処置として一定期間居住できる権利が配偶者短期居住権です。

半年あれば、新しい居住地を探すなど対策がとれますよね。

生涯、無償の権利である配偶者居住権は「登記」可能です。

しかし、配偶者短期居住権は要件を満たす全ての配偶者に自動的に備わっています。

登記不要で第三者に主張できるのです!

配偶者居住権がうまれた背景

相続の法定相続分について下記の問題点がありました。

夫であるAさん、妻のBさん、子供Cさんの3人家族の場合に、Aさんが死亡すると法定相続人は、BさんとCさんが二分の一ずつ相続します。

もしも、5000万円の住居2000万円の現金があった場合、相続財産は7000万円。

一人3500万円ずつですね。

妻Bさんは、今までAさんと同居していたこの家を相続する場合、不動産の価格が高額の為、現金2000万円にプラスして差額の1500万円を子供Cさんに譲渡しなければなりません。

1500万円・・・そんな大金は無い。。

という場合、Bさんは住み慣れた家を手放して、お金に換えて遺産分割しなければならなかったのです。

これでは、配偶者がかわいそうなので、対策として「配偶者居住権」が創設されました。

限定所有権と居住権

先ほどのAさんの相続については、相続財産が7000万円。

相続人はBさん配偶者、Cさん子供の為、1/2、3500万円ずつというのが法定相続分です。

不動産所有権は高額のため、配偶者は他の財産をもらうことができなくなります。

それどころか差額を自分の貯金から支払わなければならないのです。

しかし、配偶者居住権の場合、建物と預金を分けて計算することができます。

建物に関して、配偶者は居住権(生涯無償※有期期間も可を、子供は「負担付所有権」を相続します。

配偶者は、死ぬまで従来の家に住む事が可能。死亡後は子供が使用、収益、処分できるようになります。

建物を居住権と負担付き所有権に配偶者の年齢など考慮した上で割合を決めて相続します。

負担付所有権の価値は耐用年数、築年数、法定利率、配偶者居住権消滅時の建物敷地価値を算出した上で、現在価値に引き直すことにより計算します。

そして、預金2000万円は1/2、1000万円ずつ等分となります。

配偶者は、住む場所と生活費が手に入り安心ですね。

・・・わざわざこんな法律を創らなくても、自分の親を家から追い出すようなことはしない。

話し合えば、自然と家は配偶者が相続という流れになるはずと思った人もいるのではないでしょうか。

はい。

通常の良好な親子関係の場合は、話し合いで解決します。

この法律が活躍するのは、親子の関係性が悪い時、遺された配偶者と子供が血縁関係にない時などです。

前妻の子供、愛人の子供の場合などのトラブル回避が目的なのです。

配偶者居住権のデメリット

配偶者にとって良いことづくめに見える配偶者居住権ですが、もちろんデメリットもあります。

また、配偶者ではない人達にとっては厳しい権利ですよね。

ここからは、デメリットのお話です。

①不動産の譲渡・売却ができない

配偶者居住権は、不動産の譲渡・売却ができません。

つまり、有期期間を設けなかった場合は、生涯住み続けなければならないのです。

途中で、老人ホームに入所したいと思ってもできないのです。

住み替えができないので、慎重に考える必要があります。

「生涯」の契約を「一定期間」へ後から変更することは可能ですが、その場合は、子供への贈与扱いとなり高額な贈与税がかかります。

②年齢によって相続できる財産が減少する

相続時の配偶者の年齢が若い場合は、居住できる年数が長くなるため、配偶者居住権の評価額が高くなります。

その分、他の相続できる財産額などが減少します。

配偶者居住権の価値は、平均余命年数が長いほど高いためです。

③内縁関係は対象外

配偶者居住権は、内縁関係は対象外となります。

④固定資産税を支払う人は「所有者」

負担付き所有権を持っているものは、実際に所有できないにもかかわらず納税義務を免れません。

配偶者へ求償することは可能ですが、市町村への納税義務者は所有者です。

年月が経過して初めて見えてくる問題も多々あり、配偶者居住権を行使するかどうかは慎重に考える必要があります。

つまり、被相続人と同居していた配偶者にとってはめちゃくちゃ良い法律ですが、それ以外の相続人や受遺者には厳しい影響が出ます。

まとめ

 

配偶者居住権

目的
:相続における配偶者の待遇改善
メリット:住み慣れた家に生涯無償で住むことができる!代償金を払わなくてよいので生活費も安心!
デメリット:不動産の売却ができない!
要件:相続時に被相続人と同居していたこと。遺言等による配偶者居住権の記載
登記により第三者に対抗できる(配偶者短期居住権は登記不要)

 

配偶者居住権を行使すると、相続税の節税効果など他にもメリットがあります。

一方、負担付き所有者になった場合や、共同相続人になる場合、様々な問題点が出てきそうですね。

相続物件で有利に不動産投資を」という話も少なくなるかもしれません。

長くなりましたので、今回はここまでにします。

もっと詳しく知りたいは、メッセージ欄よりお問い合わせくださいませ☆

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