不動産投資をする際に、一番気になるのは【利回り】や【想定家賃】などの収益面ですよね。
しかし、収益面以外の土地や建物に関する法令上の制限についてもしっかり考慮して仕入れできていますでしょうか?
初心者が陥りやすい失敗として、法令上の制限がある不動産をわからないまま買ってしまって後悔するというパターンがあります。
では、「宅地造成工事規制区域」の土地、建物は仕入れしても大丈夫でしょうか
投資物件を仕入れる前に知っておくべき「宅地造成工事規制区域」のポイントを解説します。
1.宅地造成工事規制区域とは
「宅地造成工事規制区域」とは、宅地造成工事を行うことにより、崖崩れや土砂災害が起こる危険がある区域のことをいいます。
集中豪雨などの天災によって崖、山林が崩壊すると、土砂災害が起こり大きな被害につながります。
地盤改良や擁壁の新設を必要とする危険なエリアは、全国各地に存在します。
このようなエリアは、「宅地造成工事規制区域」に指定され、宅地造成を行う前に都道府県知事等の「許可」が必要です。
この宅地造成工事規制区域内では、宅地造成に関して一定の規制がかかるため、古い物件などを購入する場合に結構な問題が発生します。
特に古い物件の擁壁には注意が必要です。
宅地造成工事規制区域内において宅地造成工事をする場合は、技術的基準に適合する「擁壁」や「排水施設」などを設置して、宅地造成に伴う災害を防止するための措置を講じなければなりません
宅地造成とは、「宅地以外の土地」を「宅地」にするため、又は宅地において行う土地の形質の変更をいいます。
農地 → 宅地 ○宅地造成
宅地造成工事規制区域は都道府県知事等が指定します。
宅地造成に伴い災害が生ずるおそれが大きい市街地又は市街地となろうとする土地の区域であって、宅地造成に関する工事について規制を行う必要があるものが宅地造成工事規制区域の対象です。
大阪市で宅地造成工事をする場合は、政令指定都市のため市町の許可が必要となります。
宅地造成規制法は、崖崩れや土砂の流出による災害防止のために1962年に施行されました。
宅造法では都道府県知事等が、崖崩れ等が生じやすい区域を規制区域に指定し、その区域内で行われる宅地造成について規制を行います。
対象となる工事は着工前に許可が必要です。
また、擁壁には技術基準が定められており、その技術基準に達していない擁壁は作ることができません。
基準に適合すれば竣工後の検査終了後に「 検査済証 」が交付されます。
中古物件取得時に、崖地・斜面があっても、不動産初心者の方は気にしないかもしれませんが、ベテラン投資家は簡単に手を出しません。
なぜなら、崖地・斜面、そして擁壁がある物件には、隠れコストとリスクが潜んでいる可能性があるからです。
擁壁のある不動産の仕入れには注意を払いましょう。
※宅地造成工事規制法の規制対象工事
- 盛り土により高さ1m超の崖
- 切土により高さ2m超の崖ができる
- 切土と盛り土より高さ2m超の崖ができる
- 切土、盛り土する土地の面積が500m2以上
2.宅地造成工事規制区域の物件のデメリット
- 工事費・調査費・設計費など費用がかかる
- 工期に時間がかかる
- 災害を想定した心理的不安
宅地造成工事規制区域の土地を購入した場合、切土や盛り土、擁壁を造ることを要し、 建築費が割高になります。
安く土地を購入できたとしても、工事代が予想以上に高くついてしまうかもしれません。
工事に時間もかかりますね。
宅地造成工事では、工事費用と時間を十分見積もっておく必要があります。
宅地造成工事規制区域において、宅地造成が必要な土地を購入するかと聞かれたら、私は買いません。
自分が住む為のマイホーム、不動産投資の為の収益物件、いずれの場合もリスクを伴い推奨できません。
宅地造成工事規制区域の収益物件の「完成物件」を購入する場合も、増築、改築やリフォームをを行う際に、様々な費用や調査が必要となる可能性があります。
費用や時間以外でも、災害が起こった場合を考えると人体へのリスクや心理的不安面で嫌気されます。
自分が購入に躊躇する物件というのは、他人も同様に考える場合が多く、いざ売却したいと思っても買い手が見つかりにくいのではないでしょうか。
3.擁壁の設置に数百万かかる?
市街化区域では、宅地造成に伴う災害を防止するための技術的基準に適合する擁壁、排水施設の設置措置を講じる必要があります。
崖が崩れてこないように設置するもので、宅地造成等規制法の施行令では30度以上の傾斜地を崖といいます。
崖が生じる場合は擁壁などの安全対策を要します。建築基準法においても崖崩れの可能性がある場合は擁壁を設置するよう規定しています。
高低差が大きい坂や崖の周辺にある建物の敷地には擁壁があります。
擁壁は、様々材料で作られており石積みやコンクリートブロックで造られています。
古い擁壁、例えば増積み擁壁は、古い擁壁と新しい擁壁の境目が分かれています。
古い擁壁部分に対して土圧がかかることになるため、崩壊のリスクがあります。
擁壁の造り直しを検討する必要があります。
- 擁壁が古く劣化している場合、「基準不適合」となる場合があります。
擁壁の許可や検査を受けているかどうか、購入前にしっかり確認しておきましょう! - 宅地造成工事規制区域内で、新築する場合、「擁壁の新設」を指示される場合もあります。
- 宅地造成規制法等が制定される前に造られた擁壁、無許可で作った擁壁の場合も「作り直し」を指示される可能性があります。
宅地造成工事規制区域内の物件を検討する場合、まず「擁壁の検査済み証」を役所で確認しましょう!
土地が宅地造成工事規制区域外の物件の場合も、2メートル以上の擁壁を造る場合は、建築基準法に基づく工作物の確認申請が必要になります。
都市計画法の許可を受けた擁壁は、開発登録簿を閲覧が可能です。
しかし、高さが2mを超えない擁壁の場合は確認申請が不要の為、詳細不明です。
擁壁の耐久性を調査するために費用がかかります。
擁壁の費用は、山林の傾斜や高低差によって異なります。
また、「高さが5mを超える擁壁」「切土又は盛土をする土地の面積が1500㎡を超える土地における排水施設の設置」をする場合は、有資格者による設計が必要です。
擁壁に作る場合、数百万~数千万円かかると考えておきましょう。
※擁壁を新設、改修する場合には多額の費用がかかりますが、行政から助成金が出る場合もあります。費用の一部又は、全部を負担してくれるケースもあるので併せて調べましょう。
既存の擁壁の安全性を調査し、擁壁の作り直しを要する物件はやめておいた方が無難です。
擁壁には多額の費用がかかるからといって、工事や管理をせずにリスクオンの物件を所有すると災害時に大変な事態を引き起こし周囲に迷惑をかけることになりかねません。
不動産投資初心者の方だと、物件取得時、擁壁や崖地・斜面があっても、あまり意識しないかもしれません。
しかし、擁壁や崖地を含む不動産には、大きなリスクと隠れコストが潜んでいます。
擁壁のある不動産を購入するなら、擁壁に関する法律である「 宅地造成等規制法 」の内容についてしっかりと理解しましょう。
宅地造成規制法については、宅建士試験対策講座にて登壇しています。
もっと詳しい内容を知りたいという方は、お気軽にお問い合わせください。
まとめ
宅地造成工事規制区域内の物件は、基準を満たした擁壁・排水設備など特殊な設備が必要です。
法令上の制限をしっかりと考慮して、安全性を欠く不動産を購入すると予想外の費用がかかる場合があります。
特に古い擁壁の場合は、擁壁の検査済み証の有無や擁壁の強度については十分に確認してから購入しましょう。
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