八王子アパート階段崩落事故|大家の責任とリスク管理

不動産投資

東京八王子でアパートの外階段が崩落して、入居者の方がお亡くなりになりました。

このアパートを施工した建設会社は、5月13日に地方裁判所に対して自己破産申請をしました。

警視庁は業務上過失致死容疑で捜査中ですが、自己破産で免責となれば、ご遺族に対して責任を負うのは大家です。

今回の事故が起きた原因は、階段の踊り場です。

設計段階では鉄の部材を使うはずだったところ、施工会社が防腐処理していない木材を使用したのです。

腐食により崩落したので、施工会社に落ち度があります。

また、この建設会社は大家さんの間では低価格で請負う人気業者でした。

他の物件でも、補修工事や補償を余儀なくされる大家さんも出てくることが予想されます。

建設会社のずさんな工事により大家である不動産投資家が背負うリスクは計り知れません。

大家は経済的・刑事的にも責任を負う可能性があるのです。

見た目が錆びているなど、劣化を放置した場合は大家の過失により被害者に対する損害賠償義務が生じます。

不動産投資の利回りから考えると、責任が重すぎるように感じます。

何か脱却する方法は無いのでしょうか?

今回は、大家である不動産投資家が背負う責任の範囲と補償について執筆します。

大家は、どのようにリスク回避すべきか考えてみましょう。

補償は本当に無いのか?
大家の補償責任
不可抗力から大家を守る保険
まとめ

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1.補償は本当に無いのか?

八王子アパート階段崩落事故に関するワイドショーを見ていると

この手の施行不良では、補償、セーフティーネットが全くない

と言われていますが、本当に全く無いのでしょうか。

普段、宅建士講座の講師をしている中で施工不良でトラブルが起きた場合に備えた被害者保護の規定がいくつかあります。

今回事故が起こした物件は、築8年のため品確法( 住宅品質確保促進法 )の対象となります。

新築住宅を引き渡した売主・請負業者は、構造上主要な部分又は雨水の侵入を防ぐ部分に欠陥があった場合、10年間の瑕疵担保責任を負います。
買主は損害賠償請求、解除、瑕疵補修請求をすることができます。
(居住用・賃貸アパートともに対象)

新築住宅を請負う建設業者・売買する宅地建物取引業者は、

住宅瑕疵担保履行法」により「資力確保の措置が」義務付けられています。

住宅瑕疵担保履行法は、破産や廃業により、買主が補償が受けられなくなることがないよう新築住宅の買主保護を目的とします。

建設会社が破綻してしまった場合は、供託所に請求すれば供託金から損害金を受け取れるというわけです。(保険の場合は、保険会社に請求できる)

瑕疵担保責任を履行するための資力確保措置を義務づけられます。

新築の建設会社の場合、住宅瑕疵担保履行法により発注者や買主を保護するため、新築住宅の建築の請負人や売主に対して、保険への加入、または保証金の供託(供託所に一定額を保管する)等の義務を課しています。

今回の八王子のアパートは築8年、階段は構造上主要な部分なので、売主(業者)に責任追及できます。

欠陥建物の補修は、引渡し後10年以内なので品確法や住宅瑕疵担保履行法により補償できるかもしれませんが、被害者への損害賠償分の回収は困難です。

住宅瑕疵担保履行法の資力確保措置による供託金や保険では、不十分と思われます。

さて、今回の建築会社の施行不良により、大家である不動産投資家が背負うものは、被害者への損害補償だけではありません。

2.大家の補償責任

  • 被害を受けた入居者へ損害賠償責任
  • 階段が崩落により、他の部屋の借主へ転居費用の負担
  • 死亡、欠陥マンションという心理的瑕疵による空室リスク

借主は、大家に対して賃貸借契約の債務不履行にもとづく損害賠償請求(民法415条)・不法行為にもとづく損害賠償請求(民法709条)が可能です。

大家も欠陥があることを知っていて修補せずに放置したのであれば、責任を負うのは当然ですが、全く知らなかった場合は背負う責任が重すぎてかわいそうですね。

しかし、大家は民法717条に工作物責任を負っています。

事故原因が建築請負業者の手抜き工事だった場合でも、法律上は所有者が被害者に対してその損害を賠償する責任を負います。

「 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者(借主)は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない 」

建物の借主は過失なければ免責されるのに対して、所有者である大家は無過失責任であり、損害賠償義務を逃れることができません。

被害者が責任追及する際、相手方がわからずたらい回しになることを避けるため、オーナーは無過失責任を負うこととされています。

大家は手抜き工事をした建築業者に求償可能ですが、建設業者が破産した場合は困難です。

被害者は、建設会社の役員に対しても、不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)出来ます。役員も破産申請をしている可能性がありますが、破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権」が認められれば免責となりません。

3.不可抗力から大家を守る保険

不動産投資家(大家)は、今回の事故のように予測できない不可抗力へのリスクを常に背負っています。

建設会社や宅建業者、大家さんは「施設賠償責任保険」「 賃貸建物所有者や賠償責任補償特約 」に加入しておけば、被害者の損害は保険により填補される可能性があります。

事故のリスクを低減するには、保険の活用が必須です。

「施設賠償責任保険」は、経営している建物の欠陥・管理不備により他人に損害を負わせてしまった・他人の物を壊した場合にの損害賠償額等を補償する保険です。

不可抗力に備えて保険を検討しましょう!

賃貸物件を購入される際に必ず入るのが火災保険や地震保険ですが、「施設賠償責任保険」を特約でつけられる場合もあります。

まとめ

  • 八王子アパートは築8年の為、品確法( 住宅品質確保促進法 )の対象
  • 請負業者・売主は住宅瑕疵担保履行法により資力確保の措置が義務付けられている
  • 被害を受けた入居者は損害賠請求できる
  • 施設賠償責任保険に加入しておけば、被害者の損害は保険により填補される

今回の事件は、ずさんな手抜き工事にかかわらず、欠陥住宅の事例は、毎年全国で起こっています。

適切な修繕・メンテナンスがなければ、経年劣化による不具合も生じます。

いざという時に備えてリスク管理をしておくことが、不動産投資・賃貸経営で成功につながるのではないでしょうか。

火災保険だけではなく、施設賠償責任保険への加入を検討しましょう。

不動産の保険が得意な保険会社をお探しの場合は、お気軽にお問合せ下さい。

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