「TOBって何?どうやって参加するの?」
「TOBって、個人投資家にとっても稼ぐことができるの?」
と、ご質問を頂く機会が多いので、今回から2回に渡り、TOB(株式公開買い付け)について執筆します。
TOB(株式公開買付)とは、企業買収の手段です。
TOBという言葉は聞いたことがあるけど、詳しくは知らないという方が多いのではないでしょうか。
実際にTOBにより買収される企業の株価はどのような値動きになるでしょうか。
個人投資家にとってTOBは儲けることが手段になるのでしょうか?
気になるところですよね。
結論からいうと、TOBは、きちんと特徴を知れば損する可能性が極めて低く、利益をだしやすい投資手法です。
今回は、TOBの基本事項とTOB関連銘柄を取引する場合のメリット、デメリット、注意点を執筆します。
ぜひ、最後までお読みください
1.TOBとは
TOBとは「Take Over Bid」の略で、株式公開買付とも呼ばれる企業買収のM&A手法です。
投資者保護の観点から、買収する側は要件の下に株式を買付けすることになります。
一般的に、買収を仕掛ける側の企業が、買収される側の現在の株価に3割程度を上乗せして購入します。
買収を仕掛ける側の株価は、TOB後の成長期待によって異なりますが、買収される側の株価(市場価格)は上がりやすいので注目が集まります。
1-1.TOBの目的
TOBは、企業の買収や子会社化など企業再編のため、またはMBO(経営陣による買収)で非上場化する場合などに利用されます。
会社法では、一定割合の株式を保有すれば企業の経営判断に影響を与える重要な決定権を持つことができます。
- 3分の1を超える株式を取得すれば、相手企業を関連会社にできる
- 2分の1を超える株式を取得すれば、子会社化できる
- 100%全部の株式を取得すれば、完全子会社化することができる
新たに始めたい事業や、強化したい分野がある場合、自社で一から開発するよりも、ノウハウやすでに顧客を持つ企業を買収した方が手っ取り早いですよね。
ゼロから立ちあげるよりも、他社とのシナジー効果を上げるほうが効率的と考えてTOBが行われます。
上場企業の株式は、市場で自由に株式売買できるため、TOBにより経営権を奪われるリスクに常に晒されています。
ドラマや映画でもTOBのシーンが時々登場するので、イメージしやすいとう方も多いのではないでしょうか。
1-2.TOBの買い付け価格
TOBの場合は、一般市場ではなく取引所外で決まった一価格で買い付けをします。
なぜ、TOBは取引所外で買い付けをするかというと、市場で株式を買い占めると株価が急騰するためです。
他の投資家が、株式の買い進めに気づいた場合、TOB想定価格以上に急騰してしまい、資金が足りずTOBが不成立となる可能性が出てきます。
TOBで提示する買付価格は、一般的に市場価格(株価)よりも高めに設定されます。
TOBを成功させるために、株主が応じやすい魅力的な買い付け価格にする必要があるからです。30%ほどのプレミアムが付くことが一般的です。
1-3.TOBの流れ
TOBは、買収をする側が買収することを宣言し、あらかじめTOBを実施する期間・株数・価格を提示し、取引所外で株を買い集めていきます。
2.TOBの種類
TOBには友好的TOBと敵対的TOBの2種類があります。
2-1.友好的TOB
買収する側が、買収される側の企業の経営陣から事前同意を得たうえで株を買い進める手段
TOBの対象企業(される)と、TOBを表明する側(する)で、事前にある程度話がまとまっている場合は「友好的TOB」と呼ばれます。
友好的TOBの代表例は、グループ企業の場合や、友好関係にある会社が完全子会社化する場合などです。
友好的TOBの場合、TOBがスムーズに成立する確率が高い点がメリットです。日本で実施されるTOBのほとんどが友好的TOBです。
2-2.敵対的TOB
買収する側が、買収される側の企業へ事前同意を得ずに株を買付をする手段
株式上場していると、何の連絡もなく突然TOBをしかけられる可能性があるのです。
敵対的TOBでは、会社の支配権を獲得するための一定数の株式を取得を目的とします。
TOBにより株式を一定数買い付けることで、その企業を支配することができますし、現経営陣を退任させることも可能です。
敵対的TOBを仕掛けられた側の企業は戸惑いますよね、様々な買収防衛策を取る可能性があるので、敵対的TOBの場合は、失敗するケースもあります。
友好的TOBと比較すると、成功率は下がります。
買収防衛策には、ホワイトナイトや増配、ゴールデンパラシュートなどがあります。
ホワイトナイト
敵対的TOBで買収さえるよりも有利な条件で友好的企業に買収してもらう方が安心ですよね。
ゴールデン・パラシュート
TOB成立後、TOBを仕掛けた企業は買収された企業の経営陣を解任させる可能性が高いです。
解任される可能性を考慮し、退職金等を高額に設定することで、企業の現金比率が低下し、買収意欲を低下させることが期待できます。
3.TOB合戦
TOB合戦とは、1つの銘柄を複数の企業で取り合うオークションのようなTOBです。
最初に買収する側の企業がTOBを発表した後、他の企業がTOB買付価格を上回る価格を表明します。
すると最初の企業は、さらに高額に買い付け価格を引き上げます。
このように複数社でどんどんTOB価格が引き上げられていくという元の株主にとっては願ってもないケースです。
友好的TOBでは、既存株主が買い付けに応じれば比較的簡単に成立しますが、敵対的TOBでは防衛策により、成立する可能性は低くなります。
ちなみに、2022年4月時点で、今年の敵対的TOBはまだ行われていません。
4.全株買付と一部買付
TOB銘柄は、一般的に高騰しますが、一部買付か全部買付かによって、株価の値動きは異なります。
4-1.全株買付
- その銘柄すべての株式を、買い付け価格でほぼ確実に買い取ってもらえる
- TOBが発表されると、TOB価格に極めて近い株価まで上昇する
4-2.一部買付
- TOBに応じる株主が多い場合は抽選となり、確実に買い付け価格で買い取ってもらえるかわからない
- TOB価格よりも少し安い株価で落ち着く
全株買付の場合は、市場価格が買付か価格未満ならTOB不成立にならない限り、確実に利益を得ることができますが、一部買付の場合は、運次第です。
そのため、一部買付の場合はTOB価格よりもかなり低い位置での株価の値動きになる場合があります。
TOBの報道があった場合は、「全株買取」か「一部買取」か「取得総額」はいくらを必ずチェックしましょう。
またTOBが確実に行われるかどうかも見極める必要があります。
フライング報道に惑わされないよう要注意です。
TOBの発表前には観測報道が流れることが多いです。
観測が流れたときは、買収総額を確認し、1株当たり価格を計算しましょう。
市場価格が計算した価格より安い場合は購入を検討します。
TOBが正式発表された際の、TOB買付価格が、買い単価を上回っていれば勝ち、下回っていれば負け。このようにエントリーする手法もあります。
5.TOB株の値動きの特徴
TOBでは買収をする側が現在の株価に3割程度上乗せして購入することを宣言し、株を買い集めていくケースが一般的です。
TOBによって、いきなり3割も高く売却できるので、株価は上昇します。
また、TOBによって企業価値が高まると判断した場合には、プレミアムを上回る価格へと、更なる上昇をするケースもあります。
TOBによって買収される側の株価は上がりやすくなる特徴があります。
そして、TOBの終了期間ごろには、TOB価格に近い値で落ちつきます。
銘柄や状況によって株価の値動きに違いはありますが、一般的には、このように動きます。
6.TOBする企業のメリット・デメリット
6-1.TOBする企業のメリット
- 一定価格で大量の株式を一度に所得できる
- 経営改善や事業拡大が見込める
TOBを行えば、買収価格を事前に把握して買い進めることができます。
一度に大量の株式を買い集められるため、経営権の取得を目指すことができます。
買収にかかる時間を減らし、労力を抑えることができますね。
6-2.TOBする企業のデメリット
- TOB買付の為に、市場価格より高く買い取る必要がある
- 買収防衛策により、時間や費用が嵩みTOBが不成立になる場合がある
- 市場価格が買付価格を上回り募集が集まらず不成立となる場合もある
- TOBが無事に成立した場合も、その後の経営が必ず上手くいくとは限らない
TOBをする為には、市場価格より高値(プレミアム)で買う必要があります。
買収される企業が防衛策を打ち出した場合は、競合他社の介入があったりと一筋縄にいかないケースもあります。
尚、その場合は、株価は吊り上がりTOBされる株式を保有する投資家にとって利益が増す方向に進むかもしれません。
7.TOBされる企業のメリット・デメリット
7-1.TOBされる企業のメリット
- 買収を行う企業の安定した経営基盤や潤沢な資金が投入されるため、資金不足で諦めていた事業の拡大等にも取り組める
7-2.TOBされる企業のデメリット
- 経営権を奪われる
- 経営陣が解雇される場合がある
TOBにより、関連会社や子会社になるので、元の経営陣が会社の経営に口を出せなくなることが予想されます。
8.TOB株を購入するメリット
TOB買付価格は発表時の株価よりプレミアムが付き高くなることが多いです。
TOBの買付価格に、特段の規制は設けられていません。
過去のTOB事例から、平均価格にプレミアムをつけた価格を設定することが多いようです。
プレミアムの平均は約30%です。
TOBが発表されると、株価は買付価格にサヤ寄せするので、発表直後はストップ高になりがちです。
TOB発表後に対象銘柄をTOB買付価格以下で購入すると、TOB買付価格との価格差が含み益となります。
地合いが良ければ、公開買付に申込みをせず、市場取引で売却してもよいでしょう。
TOB株を購入するデメリットは・・・、デメリットというより注意点を見落とし購入すると損失が出るリスクがあります。
下記をあらかじめ確認しておきましょう。
- 全株買付か一部買付か?
- 確実にTOBは実施されるのか?
- TOBが不成立になる可能性はどの程度か?
- 公開買い付けを行う証券会社の口座開設や移管に間に合うのか?
まとめ
- TOB(株式公開買い付け)とは、企業の経営権などを取得するために市場外で株を買い集めるM&A手法
- TOBには、友好的TOBと敵対的TOBがあり、日本では友好的TOBの方が件数が多く成立しやすい
- TOB銘柄を取引する際は、一部買付と全株買付のどちらかは要チェック!全株買付の方が、買い付け価格間際まで一気に高騰しやすい
- TOB価格は、一般的に市場価格より30%程プレミアムが付いた価格設定となる
既に保有している株がTOBされた場合は、TOB条件の詳細を確認した上で、どうするか対応を考えましょう。
既存株主が具体的にどのような対応をすべきか、またTOBが発表後に、市場でTOB銘柄を購入するポイントについては、別の記事で解説します!
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