近年の「働き方改革」によって、日本にも副業を推進する動きが広まっています。
しかし容認している企業は全体の約半数程度とまだまだ多くないのが実状です。
公務員の場合であれば、副業は法律で明確に禁止とされています。
不動産投資って副業になるの…?
確かに株やFXなどの金融商品とは違い、現物の不動産を運営する「事業」としての要素が強い不動産投資。
不動産投資は副業にあたるのかどうか気になっている方も実際多いのではないでしょうか。
今回はそんな疑問にお応えするべく、「不動産投資と副業」についてまとめてみました。
結論からいうと、本業に支障さえ出ていなければ、副業で不動産投資をしていても問題になることはまずありません。
ポイントは「本業に支障が出ないこと」です。
- 勤め先が副業禁止だけど、不動産投資をしたい!
- 公務員だけど、不動産投資できるの?
- 勤め先に不動産投資をしていることがバレないようにしたい!
- 副業感覚で不動産投資を始められるの?
もしあなたがこのような疑問や悩みを抱えているのであれば、この記事はきっとあなたの役に立つことでしょう。
1.不動産投資は副業になるのか?
基本的に「副業」を禁止にしている勤務先はまだまだ多く存在すると思われます。
その理由のほとんどは「本業に支障が出る恐れがあるから」です。
雇っている側としてはやはり本業に集中してもらいたいというのが本音のようです。
では、不動産投資は勤め先のいう「副業」にあたるのでしょうか?
1-1.不動産投資は「副業」にあたらない
一般的に不動産投資は副業にあたらないとされています。
これには2つの理由が大きく関係しています。
理由①不動産投資は「副業」ではなく「投資」
まず1つめに不動産投資はあくまでも「投資」であるということです。
勤め先が副業を禁止としている理由のほとんどは「本業に支障が出てしまう」からです。
不動産投資は所有物件の管理・運営を管理会社に委託することで手間なく運用することができます。
不動産投資は株や投資信託などと同じ「投資」「資産運用」として認識されているのです。
理由②物件の取得は「投資目的」だけではない
2つめに物件のオーナーとなるのは「投資目的」だけではないということです。
- 親からの相続によって収益アパートを所有することになった。
- 転勤で自宅を離れることになったので、その間に自宅を他人に貸すことになった。
上記のように、本人が意図せずに物件のオーナーとなってしまうケースも当然考えられます。
これらのケースも物件を貸し出して家賃収入を得るりっぱな不動産投資です。
もしこれらすべてを「副業」とするならば、仕事を辞めるか不動産を手放さないといけなくなってしまいますので、現実的ではありません。
以上の理由から、ほとんどの企業は副業としての不動産投資は問題ないとしています。
2.副業にあたるかどうかは勤務先の副業規定がポイント
ただし、すべてがすべて問題ないというわけではありません。
サラリーマンと公務員の場合で少し異なりますので、それぞれについて解説していきます。
2-1.サラリーマンの場合
まずは民間企業に勤めるサラリーマンから見ていきましょう。
法律上、企業は社員の副業を一切禁止できないとされています。
これは日本国憲法にある「職業選択の自由」に反すると解釈されているからです。
日本国憲法第22条第1項
何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
とはいえ、本業である勤め先と労働契約を結んでいるのであれば、トラブルとならないよう勤務先のルールを守るに越したことはありません。
就業規則をチェックしておく
会社の副業禁止規定は「就業規則」に記載されていることが多いので、一度チェックしてみてください。
そもそも不動産投資は副業ではありませんし、会社にバレてしまっても特に問題になることはありません。
しかし、だからといって就業規則を無視してもまったく問題ないとは言い切れません。
就業規則で禁止されているにもかかわらず行った場合は懲戒処分を受けたり、裁判沙汰になる可能性があります。
会社とのトラブルを避けるためにも念のため「就業規則」には一度目を通しておきましょう。
副業とみなされる可能性があるケース
原則として、会社側が副業を全面的に禁止することは法律上許されていないとされています。
たとえ会社に副業がバレてしまっても、それを理由に一方的に処分されることはありません。
ただし、一部の例外の場合においてのみ会社側の副業の禁止や解雇を有効とした裁判の判例があります。
※終業後に深夜のアルバイトをして、日中はずっと居眠りしている…など
(2) 副業が本業と競業関係にある
※同業他社の役員として働いている…など
(3) 本業である勤務先の企業秘密が漏洩している
※顧客リストを横流しにしている…など
(4) 本業である勤務先の名誉や信用を損なっている
※反社会勢力との関わりや詐欺まがいの商売をしている…など
上記のようなケースにあたる場合は会社に不利益を与えているとみなされ、なんらかの処分を受けてしまう可能性がありますので注意しましょう。
銀行員は行内規定を必ずチェック!
銀行員は副業や投資に関しては規定で明確に定められている場合が多いので、必ず行内規定を事前に確認してください。
銀行員はお金を扱うという堅い職業柄、副業だけでなく投資(特に短期売買のような投機的なもの)についても行内規定で制限をしている所が多いようです。
ただこれも銀行員だから特別に不動産投資ができないなんてことはありません。
これまで見たきたように、不動産投資は「副業」ではありませんし、本業に支障が出ていない限り基本的に就業時間外に何をしようが本人の自由です。
いち従業員の「資産運用」を会社が一方的に制限するなどあってはなりません。
実際に弊社でも銀行員で不動産投資をしている人もたくさんいらっしゃいます。
(もちろん、融資は勤務先ではなく他行から受けています。)
銀行員は転勤も多いので、自宅を貸し出して家賃収入を得ている人も多いようです。
2-2.公務員の場合
次に公務員の場合を見ていきましょう。
公務員は原則として副業は禁止されています。
公務員はサラリーマンと違い、国や自治体のお仕事です。
副業で本来の職務を疎かにしてしまっては、それこそ国民の大きな誤解や批判を招いてしまいます。
公務員はまず大前提として職務に専念をしなければならないということを念頭においておきましょう。
ただし、不動産投資については本業に支障が出ない範囲で認められています。
国家公務員は基準をすべて満たせば無許可でOK
人事院規則によると、国家公務員は以下の規準をすべて満たすことで許可を得ることなく不動産投資を行うことができます。
※「人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)の運用について」より一部抜粋
不動産投資の規模は5棟10室未満でなくてはいけません。
5棟か10室どちらかの基準でも満たすとそれは事業的規模となり、副業とみなされます。5棟10室未満であっても、娯楽のための設備(※映画・ゴルフ場など)や旅館・ホテルなどの営利目的で行う不動産投資は副業とみなされるので注意してください。
年間の家賃収入は500万円を超えてはいけません。
たとえば家賃10万円のマンションを5室保有している場合、5棟10室未満という基準はクリアできていますが、10万円×12ヶ月×5室で年間家賃収入が600万円となっているので、副業とみなされてしまいます。
不動産の管理・運営は業者にすべて委託し、職務に支障をきたさないようにしなければなりません。
不動産の管理を自分一人ですべて行うのはとても片手間でできるものではありません。入居者や業者からの連絡がいつ来るかわからない上に、内容によってはすぐに対応しなければならないこともあります。管理を自分で行っていると、職務中に副業をしているとみなされてしまう可能性があります。
地方公務員は自治体によって独自の規定があるので要注意
地方公務員は自治体によって独自の規定が定められていることがありますので注意してください。
自治体によっては、規模を問わずに許可が必要なところもあるようです。
地方公務員の方が不動産投資を始める際には、事前に必ず副業に関する規定をチェックしておきましょう。
副業にあたってしまっても、許可が下りればOK
仮に不動産投資が基準を超える規模になったとしても、すぐに処分されるということはありません。
申請をして許可を得ることができれば、基準を超えても不動産投資を行うことができます。
ただし許可を得るには相当な理由がない限り厳しいと思っておいたほうがよいかもしれません。
公務員はやはり職務に専念することが何よりもまず優先です。
不動産投資でもっと大きく儲けたいと思うのであれば、仕事を辞める覚悟が必要になります。
相続による場合は許可されやすい?
「相続」によって不動産を取得したことで基準を超えてしまった場合は許可がもらえるケースが多いようです。
公務員でも親からアパートなどの収益不動産を相続することは当然考えられます。
公務員だからといって、親の財産である収益不動産の相続まで放棄しなければならないというのもおかしな話です。
相続した上で管理を業者に委託しさえすれば、基準を超えたとしても問題なることはないと思われます。
3. 勤め先にバレない方法は?
サラリーマンや公務員でも不動産投資を始めることができるのはここまでで理解できたと思います。
とはいえ不動産投資をしていること自体を勤め先に知られたくないという方も多くいるでしょう。
ここでは勤め先に不動産投資がバレないようにする方法をご紹介します。
勤め先に給与以外の収入があることが知られてしまうケースは主に以下の2パターンです。
通常であれば、住民税は給与から天引きされる「特別徴収」といわれる方式になっていると思います。
もし不動産投資による副収入があった場合、給料と副収入をあわせた住民税が給与から天引きされることになりますので、住民税の徴収額から勤め先に副収入があることを知られてしまう可能性があります。
勤め先の同僚や上司からの密告によって会社にバレてしまうも多いです。
お酒が入ってうっかり口にしてしまったり、SNSやブログなどで特定されてしまうパターンが多いようです。
3-1.確定申告をすることで住民税からはバレなくすることができる
確定申告の際、住民税の支払い方法を「給与から天引き(特別徴収)」ではなく「自分で納付(普通徴収)」に選択することで勤め先には通知がされずに済みます。
(※国税庁:確定申告書A様式 第二表)
「普通徴収」であれば、不動産投資にかかる住民税を自分自身で納めることになるので、バレる心配はありません。
ただし、この方法は100%確実ではないことに注意してください。
※不動産投資が赤字の場合は「普通徴収」ができない
不動産投資が赤字の場合は「普通徴収」ができないので、会社にバレてしまう可能性があります。
不動産投資による所得は給与所得と合算することができます。(※損益通算といいます。)
不動産投資で赤字を出すということは、それだけ所得も減っているということですので、本来の給与に対して徴収された住民税は払い過ぎとなり、むしろ還付されることになります。
この場合、給与から天引きをしている会社側に通知が届いてしまうのです。
少しの赤字であれば気付かれにくいかもしれませんが、不動産投資を始めた初年度は特に要注意です。
物件購入時は税金や手数料などの諸経費が多くかかり、不動産所得が大幅な赤字になりやすいです。
大幅な赤字によって住民税がゼロ!なんてことになれば、会社の担当者もさすがに気付くかもしれません。
※還付の申告を遅らせることで回避できる可能性がある
赤字になってしまった場合は還付の申告を翌年以降に繰り越すことで会社への通知を回避できる可能性があります。
還付を受けない間は住民税を通常どおり支払うことになりますが、会社にバレることを考えると還付を遅らせるというのも一つの手です。
※不安な人はお住まいの自治体へ確認しましょう
万全を期すのであれば、お住まいの自治体へ直接確認しておきましょう。
市区町村によっては「普通徴収」を認めてくれない場合やミスで「特別徴収」のままになっている場合もあります。
自治体によって対応もまちまちなので、不安な人は事前に確認しておくことをおすすめします。
3-2.勤務先の人には言わないほうが無難
不動産投資をしていることは勤務先の人には言わないほうがよいでしょう。
周りに知られることで「仕事に集中していない」などのいわれのない誤解や妬みを受けてしまう可能性があります。
不動産投資していることを自分からわざわざ言うメリットはありません。
たとえ仲が良い同僚であっても、いつどこでだれが聞いているかもわかりません。
周りには言わない方が無難です。
3-3.どうしても知られたくない場合は家族名義で行う
どうしても勤め先に不動産投資をしていることが知られたくない場合は、配偶者(妻なら夫、夫なら妻)や親などの家族名義で不動産投資を行うことを検討しましょう。
「勤務先が不動産投資を禁止している」場合でも、家族名義であればまったく問題なく行うことができます。
ただし、この方法をとるには名義人となる人の同意と協力が必須なのは言うまでもありません。
3-4.マイナンバーからバレる可能性があるのか?
平成28年度から導入された「マイナンバー制度」。
マイナンバー制度によって、副業がバレてしまうのではないか?と心配される方もいると思います。
結論からいうと、マイナンバーから会社に副業がバレることはありません。
マイナンバーはそもそも以下の3つを目的として導入されました。
国民の利便性の向上(手続きの簡略化)
行政の効率化(ムダなく正確に)
ですので、マイナンバーから個人情報が見られるのは行政機関だけです。
会社は、現状では「税」「社会保障」「災害対策」分野の内、定められた手続きのみにマイナンバーの利用が許されています。
これら以外の目的に利用すると法律違反となります。
※「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(マイナンバー法)」より一部抜粋
脱税しているなどの理由がない限り、マイナンバーから直接的に副業が会社にバレることはありませんので安心してください。
※脱税にだけは注意してください。確定申告と納税は必ず忘れずに行いましょう。
4.副業で不動産投資を始める際に気を付けておくことは?
ここからは副業で不動産投資を始めるにあたって気を付けておくべきことをお伝えします。
4-1.安易に仕事を辞めてはいけない
不動産投資で1件、2件と上手くいったからといって、安易に仕事を辞めてはいけません。
「サラリーマン」「公務員」としての信用がなくなってしまい、融資が受けられなくなります。
書籍やネットでは不動産投資でリタイヤに成功した人を数多く目にすると思います。
「家賃収入だけで生活する」
不動産投資をするのであれば、誰もが一度は思う事です。
しかし、家賃収入だけで本当に安定して食べていくようになるには、それこそ何億円という規模まで不動産投資を拡大しなければいけません。
「仕事を辞めてから融資をしてくれなくなった…」
そういって結局サラリーマンに戻ったという人も数多くいます。
金融機関は本業で安定した収入がある「サラリーマン」「公務員」だからこそ積極的に融資してくれていることを忘れてはいけません。
出来る限り副業で不動産投資の規模をリタイヤできるレベルまで拡大していくことが理想的です。
もしあなたも将来的にリタイヤを考えているのであれば、決して安易に仕事を辞めないようにしましょう。
4-2.しっかりと知識を身につけてからスタートする
不動産投資を始める前には事前にしっかりと知識を身につけておきましょう。
アベノミクス以降の低金利時代を背景に、不動産投資は誰もが手を出せる投資となりました。
サラリーマンが副業で不動産投資をする「サラリーマン大家」もひとつのブームとなりました。
しかし不動産投資家が増加する一方で、失敗する人がかなり増えたのも事実です。
その多くは知識がないままに始めたことが原因であることがほとんどです。
・立地が悪くて全然空室が埋まらない
・利回りが良いと思って買ったら修繕費が高くて損をした
・新築物件を買ったら、購入後すぐ値下がりした
…etc
多くの失敗は事前に知識があれば避けることができるケースも多いです。
不動産投資を副業として行う場合であっても、事前にしっかりと知識をつけることが重要です。
5.副業として不動産投資をするメリットは?
サラリーマンや公務員が副業をするにはむしろ不動産投資が最適といえます。
5-1.融資を受けやすい
サラリーマン(特に公務員)は金融機関からの信用が非常に高く、融資を受けやすいです。
これは「サラリーマン」や「公務員」は本業から毎月安定した収入(給与)があるため、きちんと毎月ローンを返してくれると金融機関が高く評価してくれているからなのです。
投資用不動産を現金一括でポンと購入できる一部の資産家を除いて、ほとんどの人は金融機関からお金を借りて購入することになると思います。
つまり、不動産投資は金融機関からお金を借りることができなければ、そもそもスタートラインにすら立てないことを意味しています。
サラリーマンや公務員は自身の「信用力」によって金融機関から融資を受けやすく、不動産投資を始めやすいのです。
どれだけ良い物件を見つけても、融資が受けられずに結局あきらめてしまう人がたくさんいる中で、これほど大きな強みはありません。
5-2.手間がかからない
不動産投資は不動産の管理を業者にすべて委託することができるので、手間がかかりません。
これは副業をするにあたって大きなメリットといえます。
アルバイト・転売・ネットショップ・アフィリエイト・データ入力・ライター・デザイナー…etc
「副業」といわれるものの数多くは労働量によってその成果が大きく変わる「労働集約型」です。
アルバイトはもちろんのこと、転売やネットショップもただ販売するだけでなく、仕入も発送もしなければなりませんし、ブログ運営によるアフィリエイトも常にブログを更新し続けなければなりません。
株やFXなどの金融商品も、人によっては相場を常に監視して売買を繰り返している「労働集約型」となっている場合があります。
副業ばかりに集中していると今度は逆に本業をおろそかにしてしまいかねません。
その点、不動産投資は一定の手数料さえ払えば、購入した物件の管理・運営をすべて業者に委託することができるので、手間がかからず本業に影響を与えることはありません。
まとめ
サラリーマンは基本的に副業として不動産投資を行っても大きな問題になることはありませんので、安心してください。
もちろんなにかと制限の多い公務員の人でも一定の範囲内であれば、問題なく不動産投資は行うことができます。
だたし、勤務先とトラブルにならないよう副業規定のチェックは忘れないようにしてください。
副業として行う以上、本業に支障が出ないように行いましょう。
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